1.緒言
近年,FSWショートコース(A1-B3-C2)におけるタイムアップのための議論が盛んになっており,関係者の注目を集めている.
今回,車輌違いやドライバ違いによる該コースの走行方法の特色を抽出すべく検討を行った.具体的にはイワタの走行データと,ほぼ同タイム(34秒3)であるSiNさんの走行データの比較からその差異について考察する.
2.車輌/ドライバ情報
それぞれの情報は以下の通り.
SiNさん
・ご本人(推定含む):吊るしの状態に近いZ33にて関東近郊のサーキットを中心に走行.2011年はZ-ChallengeのRS-3シリーズチャンピオン.ブログ記事などから推し量るに,一言一言を大切に選びながら話をされるジェントルマンである,一方,サーキットを走らせれば前走車の本名を連呼するほど秘めたる思いの強さは人一倍(と,思われる).
・車輌:フェアレディZ(CBA-Z33)
・Eng:3500ccのV6.ほぼ吊るしの状態(推定280ps,350Nmくらい).
・駆動関連:華のFR.1.5wayのLSDあり.
・タイヤ:595RS-R 265/35R18
・補強など:何もなし(N社の実力次第というところか)
・わかりやすく言うと:由緒正しいZ-ChallengeRS-3クラス車輌.
⇒すなわち極々オリジナルに近い純なクルマ.
イワタ
・本人(事実):社会人2年目よりFSWショートを中心に少しずつサーキットを走り始める.愛知県内で開催されていた草耐久レースに参戦経験あり.'09にはN2のAE111にてJoy耐参加.色々検討ごとをするくせに,最後の最後は精神論で片付けようとするイマイチっぷり.
・車輌:ランサーエボリューション3(E-CE9A改)
・Eng:2000ccくらいの直4風車付き.カムが変えてあってちょっと燃調弄り済み.(推定300ps,350Nmくらい)
・駆動関連:4足走行.Fr,Rrとも1wayのLSDあり.
・タイヤ:RE-11 215/45R17
・補強など:前後タワーバー,筋金さん
・わかりやすく言うと:
パワーに頼るのはイヤだがイマドキのクルマに負けたくもない,の具現化.
⇒地味な改修と,精神論でタイムを稼ぐというイマイチなドライバのためのクルマ.
※補足
『E-CE9A改』なのは,足回りやブレーキ改修によるもの.
改修内容はこのへんやこのへんなど参照.
3-0.検討結果 -全周総論-
それぞれのベストラップデータをLAP+viewに入力し,位置補正をしたものを検討に用いる(SiNさんの補正量は上下方向:3.5m,左右方向:-2.0m,イワタの補正量は上下方向:2.7m,左右方向:-3.5m).なお,GPSロガーによるタイムは両者とも(奇跡的に)34.377秒である.また,セクタはイワタの判断により『ステアリング操作が落ち着くところ』のイメージでほぼ11秒程度ごとになるよう分割した.なお,本検討ではこのサイトにて記された呼称を併用してコース各部を示すこととする.
http://www.toyota-motorsports-club.org/soukoukai/s_corse_zu.html
Fig.1に両者の走行データを示す.
ライン取りについて,セクタ1,2に際立った差が現れている一方,セクタ3ではほとんど差異がないことがわかる.最高車速ではイワタが140.1km/hと,SiNさんを1.2km/h上回っている.また,加速度を比較するとイワタの最大値が0.53Gであるのに対しSiNさんは0.45Gであることがわかり,イワタの方が車輌の動力性能/車重では有利であることは自明である.一方,最低車速ではSiNさんが40.1km/hとイワタを1.3km/h上回っており,氏のコーナリングスピード維持能力の高さがうかがえる.
3-1.検討結果 -セクタ1(SiNさん:10.808秒,イワタ:10.662秒)-
Fig.2に示すとおり,コントロールライン付近から徐々に30Rのクリップに向けアプローチするSiNさんに対し,イワタは親の敵の如くアウトから進入し,30Rのクリップを外しつつあることがわかる.このライン取りから30Rへの進入においてSiNさんの方がステアリング転舵速度がゆっくりであることが予測され,30Rクリップ付近での車速がSiNさん95.5km/hとイワタ比3.5km/h高い速度を維持できている要因であると考えられる.これに対しイワタは14R進入手前にて再度加速することでリカバリを図るが,30R⇔14R間の距離が短いため加減速が連続し操作に時間的余裕がなくなる.
14Rは両車とも縁石を跨ぐラインをとっている.直後に控える9R(ヘアピン)を考慮すると14Rのクリップ付近でブレーキングできていることが望ましいが,両車とも0.2~0.3G程度の減速度であることからブレーキ操作をしていない,もしくは緩ブレーキ程度であると考えられる.これは,車輪を空転させておく(加減速しない)ことで縁石通過時の車輌へのインパクトを抑えようとするドライバの配慮によるものであると考える.
ヘアピンにおいて,コーナリングスピードに劣るイワタは4駆のトラクション良さおよびタービン付き車の立ち上がり加速良さに頼りきり,9Rをインベタで周っていることがわかる.結果9Rを抜けかかった時点で既に加速に転じておりセクタ1終了付近で10km/h近い車速差をもうけることができている.一方,SiNさんはヘアピンに対しインベタで進入,若干アンダーステア(以下US)気味でコーナを脱出している.これは,①その車重と車格ゆえ小回りが苦手 ②登りながらの左コーナのため,FRの場合トラクションが不十分で加速できないもしくは加速するとフロント荷重が抜け曲がらない のいずれか(もしくは両方)の理由によるものと考えられる.ヘアピンにおいては4駆ハイパワー車が有利であることが明確になったと言えよう.
※なお,ヘアピンにおいてSiNさんの横Gが2G近くまで上昇しているが,これは若干考えにくい現象である(タイヤとドライ路間の摩擦係数は通常1.1付近であり,理論上発生できるGは1.5G程度であるため).要因として考えられるのは,①瞬間的なスピンモードからグリップに転じたときの揺り返しなどによるもの ②レールが敷いてある のいずれかである.
3-2.検討結果 -セクタ2(SiNさん:11.368秒,イワタ:11.448秒)-
ここでは30R→74R→14Rのライン取りの差異が顕著となっている.SiNさんは74Rをコース幅中盤を維持しながら抜け,14Rへの進入角も浅くなっていることがわかる.一方イワタは74Rをインベタに近いラインでトレースしており,結果的に14Rへのアプローチ時の旋回Rが小さくなっている.これは,74R後半の逆バンクでUSが発生することをきらってのことではあるが,結局どうしてもUS発生し左足ブレーキにてごまかしながら14Rへ進入するため車速を落とさざるを得ない.これは減速度データからも読み取ることができる.74R中盤にて両者とも0.45G程度の減速をするが,続く14Rのクリップでは既に0G(加減速なし)となっているSiNさんに対し,イワタは0.3G程度の減速を続けている.結果的に,14Rから12Rまでのおよそ4秒間はSiNさんの車速が常に高く,その車速差は最大で10km/hに上る.この車速差は旋回Gからも明確である.74Rおよび14Rにおいて旋回半径を大きくとっているにもかかわらずSiNさんの横Gはイワタより0.2G程度大きい.また,直後の12Rにおいては同一ラインをトレースしているにもかかわらずSiNさんの方が横Gの立ち上がりが1秒程度早くなっていることがわかる.
タイム差としてはさほど大きなものではないが,イワタの改善代はセクタ2にあると考えられる.特筆すべきは,この区間における走行距離はイワタ284.9mに対しSiNさんが284.2mとほぼ同等(むしろSiNさんの方が短い)なことである.74Rに対しインベタ気味で走り走行距離を短くすることで旋回性能の悪さをカバーしようとするイワタの目論見の妥当性がないことがわかる.
3-3.検討結果- セクタ3(SiNさん:12.201秒,イワタ:12.267秒)-
セクタ3のライン取りについては両車ほぼ同一である.
イワタは,SiNさんにつけられた12R手前までの車速違いを,動力性能およびトラクションの良さによりリカバリする.しかし,最終CコーナでのUSをきらい,SiNさん比0.9秒程度早くブレーキングを開始している上,ブレーキリリースの量やタイミングがSiNさんとほぼ同一であり,結果的に最終コーナの通過速度がSiNさんより遅い(最大5km/h程度).これに対し,イワタは動力性能のみでホームストレート上にてリカバリしている.
また,ホームストレートにて顕著なのがシフトアップによる加速度の途切れである.トランスミッション修理を実施した直後であったこともあり,イワタはシフトアップの操作を遅くしている(加速のラグ1秒程度).これに対しSiNさんの加速ラグは0.5秒程度である.イワタ車は比較的クロスしたギヤ振りなためホームストレート上でのシフトアップが2回発生しており,SiNさんに比べ加速度の途切れによるタイムロスが大きくなっていることが考えられる.
4.考察(各々の特色について)とまとめ-
今回の検討から,旋回速度を出来る限り高く保持し,ブレーキングポイントも奥に遅らせながら走行するSiNさんに対し,車速を落としてでもコーナをタイトに周り,動力性能とトラクション良さを活かし走るイワタ,という特徴がわかった.いずれも車輌の長所を活かした走り方と言えるが,少なくともイワタについてはセクタ2において改善できる領域があるように感じる.
今後はセクタ2について課題バラシを行うと同時に,ハード/ソフト両側面からの対策を行う(~Jan/2012).